自分で行う口腔ケア② 生活習慣にご用心!

●歯周病・虫歯は生活習慣病

主な原因が生活習慣にあると考えられる病気を「生活習慣病」といいます。

歯周病や虫歯は感染症ですが、その危険を高めているのが生活習慣です。

感染症というのは、細菌によって部分的に体が負けそうになっている状態です。

炎症という形で、それはわかります。

細菌と闘っているのは、体の免疫力です。免疫力を最大限に引き出す生活を送ることが、歯周病や虫歯の予防にも重要になります。

したがって歯周病や虫歯にならない注意は、健康への全般的な注意、あるいはさまざまな生活習慣病の予防と重なるのです。

以下のようなことに注意しましょう。

 

①必要な栄養をしっかり摂る

最近は、ダイエットを気にするあまり、本人も気づかないうちに栄養失調に陥っている若い女性が増えているそうです。

栄養は健康の基本です。偏食や無理なダイエットは免疫力を低下させ、感染症を起こしやすくします。歯周病や虫歯も同じです。

ジャンクフードはできるだけ避け、旬の食べ物を好き嫌いなく食べ、タンパク質を中心としたバランスの良い栄養を摂るように心がけましょう。

 

②タバコをやめよう

タバコは「百害あって一利なし」といわれますが、歯周病や虫歯にも同様です。

タバコを吸うと交感神経が興奮して、血管が収縮します。

すると血液の通り道が狭くなるので、血流が悪くなります。

全身の免疫システムの最前線で働いている免疫細胞は、血液中にいます。

タバコによって歯ぐきやその周辺の血流が悪くなれば、侵入した細菌と闘う免疫細胞の数もそれだけ少なくなります。

体の防衛力は弱まり、歯周病や虫歯になりやすくなってしまうのです。

 

③ストレス解消と十分な睡眠を

ストレスや睡眠不足も、血液循環を悪くします。

ストレスを感じると、脳下垂体や副腎皮質からストレスホルモンが分泌されます。

これによって交感神経が興奮し、血管が収縮するからです。

ストレスが続くと、リラックスしてよいときになってもリラックスできなくなります。

交感神経がずっと興奮しているためぐっすり眠れなくなり、そのためにまた交感神経が興奮するという悪循環に陥ります。

こうして血液循環が慢性的に悪くなると、歯周病や虫歯などの感染症が起こりやすくなり、また治りにくくなるのです。

さらに、ストレスを感じていると唾液の分泌が少なくなります。

唾液は口腔衛生に大きな役割を果たしています。中高年になると歯周病にかかりやすくなる原因の一つとして、唾液の分泌量が少なくなることもあげられます。

その唾液が、ストレスで減ってしまうのです。

ストレスはその日のうちに解消できるのが理想です。

 

④唾液のたくさん出る生活を

唾液には抗菌作用があります。また、お口の中を洗い流す役割もあります。

 

このため唾液がいつもたっぷり出ている人は、口内細菌が多少増えても歯周病や虫歯になりにくいものです。

中高年になると、若いころのようには唾液が出なくなります。これは口腔衛生にとって大きなマイナスです。

おまけに慢性的にストレスを抱えていると、「ドライマウス」といって唾液の分泌が極端に少なくなって歯周病や虫歯の危険が大きくなります。

そこで、できるだけ唾液がたくさん出る生活を心がけることも大事になります。

第一に、よく噛むことです。噛む刺激によって唾液がたくさん分泌されます。

第二に、水分摂取を十分に行うことです。

水分は、一説には食事以外に1日に2リットルくらいとるのがよいといわれます。

唾液分泌のためにも大切です。

第三に、楽しく没頭できる時間を増やす、ということです。気の合う仲間と

笑いながら食事ができれば、唾液分泌もさらに増えるはずです。

口の中の細菌はプラーク(歯垢)の中にたくさん生息しています。

ハミガキの目的は「プラーク・コントロール」といえるでしょう。

 

⑤適度な運動を心がける

適度な有酸素運動を行うと、筋肉は規則的に収縮をくり返すことになります。

これが血液を送るポンプの役割も果たすことになり、循環がよくなります。

「足は第二の心臓」といわれますが、これも歩くことによって足の筋肉が収縮し、足元に鬱血した血液を心臓に戻すのを助けるからです。

また、適度な肉体疲労は睡眠の質を良くしてくれます。

深い眠りは心身の疲れを取り、血液循環を良くします。ストレス解消にもなります。

ストレスや睡眠不足を感じる人は、毎日30分程度のウォーキングなど、無理

のない運動を続けるとよいでしょう。

血液循環が改善されてくるからです。

 

⑥歯周病を招きやすい疾患(糖尿病、リウマチ)

前にも述べたように、歯周病はいくつかの全身疾患と深い関係があります。

発症や悪化に、お互いに影響しあっているのです。

とくに注意されているのが、糖尿病との関係です。

糖尿病の患者さんは免疫力が落ち、傷などの治りが悪くなります。

歯周ポケット内での歯周病菌の増殖も、起こりやすくなっています。

また、思春期の女性、妊娠している女性も、ホルモンの関係で歯周病になりやすいといわれています。

最近は、リウマチの患者さんにも歯周病が多いことがわかってきました。

歯周病を招きやすい疾患にかかっている場合は、それぞれの専門医にかかるだけでなく、歯科医院で歯周病も同時に治療する必要があります。

 

  次回は『「噛むこと」=「生きること」です!』というテーマでお話ししていきます。