虫歯や歯周病になりにくい、お口の環境づくり

●歯の先進国、北欧も昔は虫歯が多かった

スウェーデンなどの北欧では、80歳のお年寄りでも自分の歯を平均20本以上維持しています。

ところが日本人の80歳の平均は、10 本から十数本といわれています。

 

この差は、どこからきているのでしょうか。

 

北欧でも、40年、50年前には、かつての日本と同じように子どもたちに虫歯が多く、

また年齢を重ねるほど歯を失っていく人が少なくありませんでした。

それが現在では、若い人の虫歯はほとんどなく、中高年になって歯を失う人も珍しくなっています。

その理由は、1970年代に「治療」から「予防」への大転換が行われたからです。

 

●日本では「痛くなってから歯医者さんへ行く」が常識だった

日本では以前は、定期的に歯科検診を行い、

自分でしっかりした意識をもって口腔衛生を行うということはほとんど行われていませんでした。

学校検診で虫歯が見つかったら歯医者さんで治療する、

虫歯が痛くなったから、詰め物が取れてしまったから、歯がぐらぐらするから歯医者さんへ行く、それが普通でした。

いまもそういう人は多いと思います。

 

最近は歯科予防の意識が高まってきているので、

治療をきっかけに定期的な口腔ケアを歯科医院で行う人は増えてきました。

しかしまだまだ少数派です。

 

●治療だけでは、結局は歯を失うことにも……

先ほど述べたように、実は北欧でも以前は日本と同じでした。

子どもたちの多くが虫歯になって、

虫歯になると歯医者さんで治療してもらうという治療優先のスタイルだったのです。

 

しかし、口の中の健康は、

治療で以前とまったく同じように復元できるものではありません。

歯周組織は皮膚のようには再生しません。

虫歯を治療しても、その患者さんの口腔衛生の考え方や習慣を変えなければ、

また同じように虫歯になっていきます。

 

そこで再び治療、また再発のくり返しです。

そうして歯を失う時期が少しずつ近づくわけです。

 

歯周病も同様です。

 

口腔衛生への考え方がしっかりしていなければ、

いずれは歯周病になる可能性が高まります。

症状がないからと放置してしまうと、歯槽骨は知らないうちに溶か(吸収)されて、

歯はぐらぐらしてきます。

そこであわてて治療しても、毎日の口腔衛生への意識を変えない限り、

歯周病は再発してしまうのです。

 

症状が現れてから歯医者さんへ行って治療する、

そのくり返しでは、根本的な解決にはなりません。

 

●歯を維持する方法は「予防」しかない

北欧の国々は、そこに気づきました。

そして70年代から国を挙げて「歯科医療は治療から予防へ」という、

大きな転換を行ってきました。

 

予防とはつまり、本書で何度も出てくる口腔衛生、つまりハミガキのことです。

虫歯がほとんどない、80歳でも平均20本以上の歯を維持しているという現在の北欧の国々の姿は、徹底的に予防に力を入れた結果に違いありません。

 

そしてこのことが、北欧のお年寄りは日本よりも圧倒的に寝たきり老人が少ないということにもつながっていると考えられているのです。

  次回は『歯を失ういちばんの原因は「歯周病」』というテーマでお話ししていきます。