歯周病と糖尿病②

細胞がインスリンを感知するアンテナが鈍る

 

まず、インスリンがどうやって血糖値を下げているのかを考えてみましょう。

 

膵臓から分泌されるインスリンというホルモンは、食事のあとで血液中に増えた糖を回収し、筋肉などの細胞に運んでいき、細胞の中に取り込ませます。

 

こうして血液中の糖を細胞に利用させ、血糖値を下げています。

 

このとき筋肉などの細胞は、インスリンを感じるアンテナを働かせます。

 

糖を持ったインスリンが近づいてくるのを感知して、みずから糖を取り込もうとするのです。

 

いくらインスリンがたくさんの糖を運んで来ても、細胞がアンテナを働かせず眠ったままでは、糖は細胞に取り込まれません。

 

これがインスリン抵抗性という状態です。

 

歯周病菌によって血液中にTNF-αが増えると、筋肉の細胞がインスリンを感知するアンテナが鈍り、糖を取り込めなくなるのです。

 

このためインスリンが連れてきた糖は細胞を素通りし、依然として血液中をめぐりつづけます。

 

インスリンは効かず、血糖値は下がりません。

 

歯周病は早期治療が大切

 

糖尿病は寿命を縮める疾患といわれます。

 

そして歯周病は、中高年の8割が持っているともいわれる疾患です。

 

「歯周病と糖尿病は関連がある」といわれると、中高年の方は誰もが不安に思われるでしょう。

 

しかし、必要以上にこわがることはありません。

 

第一に、歯周病が糖尿病を引き起こしたり治療を妨げたりするのは、重度になってからです。

 

そうなる前に治療することで、糖尿病への道も絶つことができます。

 

第二に、歯周病は治療やセルフケアによる口腔衛生の効果がはっきりと現れる疾患である、ということです。

 

かなりひどくなると残念ながら歯を助けることが困難、ということもあります。

 

しかし、中程度より軽い歯周病であれば、治療によって歯周病菌が減り、それ以上の悪化を防ぐことができます。

 

さらに初期の歯周炎であれば、数回のスケーリング(歯石除去)やセルフケア、定期的なメンテナンスですみます。

 

早期治療がいかに大事か、おわかりになると思います。

 

歯周病は糖尿病と同じように、歯がぐらぐらしはじめる重症になるまで、ほとんど症状が現れません。

 

激しい痛みがないのは、虫歯と大きく違うところです。

 

そのためにみなさん放置しがちなのですが、そうしているうちに歯周組織は歯周病菌によって確実におかされていきます。

 

そんなことにならないために、治療と口腔衛生を行いましょう。

  

次回は『細菌性心内膜炎』についてお話ししていきます。